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【仲良き事は】幽霊と暮らしてる【美しき哉】別館
311:739◆Al9ki804zA2021/06/17(木) 22:29:33.74 ID:UGQ/9EQF0 『警戒された話』 しだらがツいてから最初の晩秋だったと思う。 ある休日に、母と姉夫婦一家とでショッピング街で買い物をしていたときのこと。 色々な店を見て回り、ちょっと休憩しようという流れになって、ショッピング街にある百貨店の上層階の軽食店に入ったんだ。 座って足を休めて、注文した飲み物を飲んで。 そうしたら不意に深い眠気を覚えて、母と姉達に「眠いから軽く寝るわ」と言って、目を閉じた。 恐らく、歩き回り続けて疲れたのだろうと、そう、思って。 そして浅い入眠に入ったのだが、カラダは眠っていてアタマは起きている状態になり、意識の限りに広がるのは闇の空間。 怪訝に思いながらも「(いざとなったら無理矢理覚醒すればいっか)」と闇の空間の中を進んでいった。 そうしていくと、不意に、ジブンから遠ざかった気配を知って振り向けば、そこにはしだらが中空で拳をナニかに叩きつけながらコチラを聞こえない声で呼び続けて、取り残されていた。 ナニかは良くわからないが、どうやら透明な壁に阻まれていたらしい。ヤツだけが。 ますます怪訝さを覚えるも、先のほうにジブンたち以外の気配があることに気付いて、ヤツを置いてそのまま進んだ。ヤツのことなら、どうせあとで追いつくだろうと。コチラがどれほど離れようと引き剥がそうとしても他の連中の干渉にされようとも、悪霊顔負けの執念で追い続けるコイツなら。 そうして進んでほどなくすると、周囲の闇の空間よりも更に濃い闇、漆黒の色をした二つ尾の山犬が、目の前にいた。 その山犬は漆黒の毛並みより更に深い黒い眼をコチラに向け、警戒、不審、苛立ち、の念を露骨に醸し出して、ただ伝えてくる。 ――何しに来た
312:739◆Al9ki804zA2021/06/17(木) 22:33:24.58 ID:UGQ/9EQF0 その問いかけに、おれ。 「(えーナニしに来たと云われても、ここショッピング街だから『ショッピング』以外にナニがあるっていうの。つか、呼んだのそっちじゃね?だのに、なして『何しに来た』云われなあかんのよ)」 と、思ってソレを伝えてみれども向こうが警戒を解く気配など皆無が過ぎて、 「(あー、まー。『ショッピング』しに来たように思えないから、わざわざココに呼んでんだよなぁ。つか、本当に『ショッピング』以外の何物でもないんだけど、一体どーすりゃ、)」 と、思い返しながら少し困ってふと思い出す。昔読んだ読み切りマンガを。超能力SFで、テレパシーだけでは信用がならないと不審を露にする相手に対して主人公が取った行動は。 「(確か『心を見せ』ればいんだっけ)」 しだらが勝手にしょっちゅうヒトの心どころか精神や魂の奥までダイブするので、見せ方はなんとなくはわかる。 が、 「(ナマ情報だから加工のしようもないし。でも、情報が雑多過ぎて大変な気も・・・ってそんなのコッチの知ったことじゃないか。仕掛けてきたの、向こうだし)」 ダイブすると『数多く』の『本心や本音』が「雑多に転がっている」ため、流石に「優先順位」まではわからず潜っておきながらコチラに順序を問うこと当時しばしば。 そして黒い山犬に心を提示、もとい読み取り権限の開放をした。
313:739◆Al9ki804zA2021/06/17(木) 22:35:02.92 ID:UGQ/9EQF0 すると、黒い山犬は今一つ腑に落ちなさそうな気配を呈するものの、流石に無加工情報をジブン都合で見ておきながら食い下がるという野暮な真似はしなかった。 そうして周囲から闇が引いて山犬の姿も気配もなくなり、ふとした瞬間には寝入る前の軽食店のテーブルについたままで、母と姉一家は雑談したままだった。 そこに同じく加わり、何事もなく退店して解散し、私は友人たちとの飲みの約束のため母と家に戻らず飲み場所の最寄り駅へと向かった。 そして時間つぶしのために、最寄り駅のカフェでひとり寛いでいて、 思い出すのは先ほどの不可解な出来事。 「(あそこにショッピング以外の目的なんぞないのに、なして警戒されなあかんのよ)」 と、くさくさした気分ながらも、思い返したのはしだらとの引き離し。 なんであんなことをする必要があったのか。 「(あの山犬の目的は飽くまで、アタシ、なのはわかったが、こちらとらパンピーでしかないぞ。そのパンピーがヤツと共にいたら、なんか厄介とか面倒なことでもあったのか?)」 と、甘いカフェオレで糖分摂取して、思い至ったのは。 「・・・ひょっとして、アタシ、本当に警戒されていた?」 しだらは「ニンゲンが好き過ぎて過干渉のやらかし常習者」のために「神不在の社に『社と云う装置を稼動させるための装置』として投獄されていた」という前歴持ちである。 そしてソレを、結果的にとはいえ、投獄状態を解除してしまったのは、私。 更に、その投獄の神社は、いた百貨店から徒歩30分あれば着く、百年ほど前ならばゆうに徒歩圏内の場所。 あの山犬がその百貨店住まいならば知らない線のほうが薄いだろうし、その百貨店を守っているならば、 想ったニンゲンのためならばナニをも厭わない旧くからの神と、そんな神を開放して連れ歩くニンゲン。 その『ニンゲン』が本気で望めば、或いは、 ジブンがパンピー過ぎてソレまで考えたこともなかったが、周囲がどんなメでコッチを見ているのかを改めて考えたら、 一瞬だけ、一髪よりも短い時間だったが、確かにゾッとした。
314:739◆Al9ki804zA2021/06/17(木) 22:36:59.30 ID:UGQ/9EQF0 が、 「ま、パンピーはパンピーでしかないから、期待されたとこでナニもねぇわな」 と、思い直し、改めて甘いカフェオレを啜って始まるまでの時間を潰した。 そしてソレからかなり経ってもう一度、今度は姉夫婦と共にその百貨店へ赴いた際、目的もなくなんとはなしに最上階まで登ったのだが、そこでやっと知った。 その百貨店には屋上社寺があり、その社寺には『豊川稲荷大明神』に関連した云われがあるとのこと。 ということは、アレはとても真面目な神遣さん(昔に周囲が火の海になっても祀っていたその百貨店は無事だったという)であり、だとしたら確かにしだらのようなヤツは、そもそもが「気に食わない」相手でしかないよなーと。 とはいえ、アレは少なくとも『狐』ではない、狐の尻尾はああじゃないし、顔つきも違う。ヤマイヌのほうが近い。 そもそも、豊川稲荷の元はダーキニーであり、当柱のアレは『ジャッカル』であり、そのジャッカルを狐扱いするのはどっちにも失礼だよなーと。 狐が全部稲荷(伏見稲荷のそもそもならば秦氏による稲荷山を用いた祖霊信仰で『狐』は後世の後付けだし)だと思っていなければ、稲荷が全部狐だと思ってもないし、思えるわけもない。 『狐スキン使ってりゃ、ニンゲン勝手にびびってくれて楽勝www』 って、向こうが舐めているのを知っているなら尚更に。
315:739◆Al9ki804zA2021/06/17(木) 22:39:50.57 ID:UGQ/9EQF0 余談『警戒されはしたが、の話』 今から数年ほど前の年末のこと。ゲーム仲間の頼みでゲームイベントのボランティアスタッフをやって欲しいと頼まれ、引き受け、向かった当日のこと。 目的地の最寄り駅とは呼べはしないが、徒歩で充分向かえるくらいの駅で、降りた。 そこは、かつて長らく路線の『始終』だった駅だが、他線との乗り入れでそうではなくなってしまった駅だった。 そして、幼いころからその路線を使っていた身として、その『最後の駅』に対して憧憬の念を抱いており、しかし、どこか勿体なさもあって、そこまで乗ることは全くなく、イベントボランティアを機会として初めて駅に降りることができた。なお、しだらの神社はその駅の一つ前で、コチラはしょっちゅう乗降してはいるのだが、コレは単に路線乗り換えでなんだ。 駅の名前は、その一帯で有名な社寺のソレ。ようやく、この期に参拝することができた。 天気こそあいにくの雨だが、小降り程度のためそれほどのことじゃない。 さぁ、いったんの目的地へ向かうぞ、と意気込んで歩いていたのだが、 かなり近いところまで来て、ふとカオに違和感を覚えて、ふと立ち止まる。 何やら、薄すぎて視認できないベールのようなものが垂れ下がっていて、ソレが顔に掛かったような感触だった。 その妙すぎる感覚に小首を傾げる、と、 ――ふん、『(しだらが投獄されていた社寺名)』とこの小娘か
316:739◆Al9ki804zA2021/06/17(木) 22:40:25.04 ID:UGQ/9EQF0 妙齢の女性の声が聞こえたかと思うと顔を覆っていたような違和感は消え去った、とはいえ少し呆然。 「(え、アレが所謂『結界』なの? つか、そんなの実在してたの?)」 と、フィクションでしかないと思っていたモノに軽く驚きながら、 「(アタシ、もう来年30なんだけど!?『小娘』はキツいでしょ『小娘』わ!)」 と、子供扱いされたことに軽く憤慨しつつも連中の存在時間を考えたら、間違ってはいないと溜飲を下げ、 「(つか、ヤツんとこのってナニ!!? アタシあそこの氏子でも崇敬者でもないんですけど???)」 と、勝手に括られたことに立腹しつつも、向こうからしたらそんなどうでもいいことにいつまでも足を止めるワケにもいかず。 参拝するぞと中に入り、かなり近代化されていることに、幼い頃の憧憬にヒビが入る音を聞きながらも、センサー式ハイテク手水で手を洗っていると、不意に周囲が明るくなって、なんとはなしに顔を上げて、 びしり、と、カラダが音を立てて固まった。 小雨ながらもしっかりとした冬の曇天、だった筈だのに、 社寺周辺の上空だけが青く広がり、白い太陽光が内部を明るく満たし、雲が消える前に落ちた小さな雨粒がきらきらと差し込んだ太陽光を受けて輝き出す。 局所が過ぎる天気雨 その『出迎え』方に、私は、ただ、ただ、 ジブンの眼が死んでいくのを、感じ取ることしかできなかったんだ。 ――――
317:739◆Al9ki804zA2021/07/01(木) 21:55:28.49 ID:S4Jn+cGo0 『家付きカー付きババ抜き』の発想で選ぶのは確かにアリだけれども、な話 月初の朝礼で一つ年下の先輩女性社員の正式な結婚報告が発表されて、ふと思い出したこと。 飽くまで『今は昔』でしかないのだが、私は異性から結構好意を寄せられるほうだった。 しかし、「愛と好意は各暴力の免罪符」という考えがあるのと、 そもそも他者への興味関心が薄いため、寄せられた好意に浮かれて付き合っても恋愛感情自体に三日で飽き、一週間で相手へのケアがめんどくさくなるもがんばるもめんどくささが勝り、一ヶ月で自然消滅か先方病み化という結果に終わるので、流石に「こらー、あかんわ」となって、先方からソウイウ気配を察知したら距離を取って先に自然消滅を計っていた。 飽くまで『今は昔』だが。 そんな『昔』のこと。今の体質を負ってから数年経過していたときのこと。 当時よくつるんでいたゲーム仲間で「行ける人間でネズミー行こうぜ!」とネズミー大好き者が発案し、割と日数は早かったが、そこそこの人数が集まった。 そのメンツの殆どは互いに軽口叩き合える同士なのだが、一人だけ『私』には確実な地雷人間がいた。しかも、肌と直感で私に好意を抱いていることがわかったので、尚更に警戒対象だった。 とはいえ、 「(こんなそこそこの人数いるんだから変なことは起こらんし、起きんでしょ。変に動こうものなら周囲のからの止めが入ってソッチが『注意人物』確定扱いされてジブンの立場悪くなるんだから、流石にそこまでバカでもないだろ。まぁ、そんなバカだったら周囲にソウだと周知されるから、アタシは構わんけどな)」 と考えてフツーにアトラクションや歓談を楽しむことにした。 しだら? ヤツはテーマパークの話が持ち上がった瞬間からバイブス()上げまくって入園と同時にどっか行ったよ。 それはさておき。
318:739◆Al9ki804zA2021/07/01(木) 21:57:27.75 ID:S4Jn+cGo0 ネズミー大好き者のガイドの下、ファストパスを取っていって効率的に巡っていった。 ビッグサンダー、スプラッシュ、ホーンテッド、他。 そんなこんなで楽しんでいたのだが、なんか様子が妙だった。 メンツの何人かが私と距離を置いており、その空いた距離に件の地雷人間が入ってきてる。 思い違いか?と考えてそれとなく距離を調節していみると、メンツの何人かがソレに合わせて同じように調節してきて、開いた距離にやっぱり地雷人間が入ってきた。 ピンときた。 コレはヤツに相談かナニかを持ちかけられて立てられた『企画』なのだと。発案から程なく(半月もなかった)実行「できた」のは、明確な目的があったから。 「(あんたらコイツが地雷人間わかってないからそんなことできるんだぞ)」と内心でちょっとカチンとキたものの、わからないものはわからないのだからしょうがないし、何より相談を持ちかけたら動きたくなるのが人情というもの。つか、ネズミーは楽しい。それが一番大事。 先ほど置いてみた距離とメンツとの動き方で、全員が全員グルというわけでもなく、純粋に楽しみにきた人間もいることがわかり、その人間を主な歓談相手とした。これなら、地雷人間に“お前に興味はねーんだよ”と見せることができるし、企画者たちにも“わたし、コイツ、ヤなんで”と知らせることができる。 そしてソレが功を奏したのか、徐々に地雷人間が焦りを見せ、全く関係のない話題を振って逆に周囲を白けさせたり(発案者がソイツに少し離れた場所で「その話題は今に相応しくない」と注意したのが見えたし聞こえた)、夕方過ぎた頃に「なんでぼくを避けるんですか!!」と、周囲がいるにも関わらず面と向かっての大声。これにはメンツが驚き固まったが、一方の私といえば突然の大きな音に驚きこそすれ「(コイツ、バカだったか)」と相手に対する認識を下方修正して、言った。 「大声出さないでくれますか? 他のお客さんもいるんですよ?」
319:739◆Al9ki804zA2021/07/01(木) 21:58:12.68 ID:S4Jn+cGo0 そのややあと、夕食&パレード観覧のため、とあるレストランのテラス席にて。 男性陣が食事の注文と引き取りの間、女性陣が場所取りをしていたときに、 発案者が、私に頭を下げた。 「キユさん、ごめんッ」 私が気付いていたことに気付いた故の謝罪だった。 「いいーえー」 私は笑って手を振った。 私としては、ネズミー自体は最高だし、メンツとバカやれて楽しいし、自衛はできてるし、ヤツがボロったために今後はないだろうし、メンツに「あいつなんかちょっと?」と思ってもらえただけ充分(そして実際こっから結構イロイロやらかし始めて界隈から警戒すらされる)だもの。 料理を食べながらのテラス席から見たイルミネーションパレードは、素晴らしかった。 やや遠目だが、変に見切れや途切れもなく、しっかりと眺められた。
320:739◆Al9ki804zA2021/07/01(木) 21:58:53.59 ID:S4Jn+cGo0 そうしてお開きになり、シャトルバスで最寄り路線駅まで乗り、家の最寄り駅まで電車で揺られている中。 なんだか珍しく申し訳なさそうな気配を滲ませているしだらに、どこか狼狽しているオニ(鬼門丑寅からの連想ゲームで生まれた牛角虎パンというキャラ化された『鬼』ではなく、原義の『隠』に近い元・死霊への便宜上呼称)。 一体なんだと思ったら、しだら。 『いや・・・ただちょっと、子ども見たいなぁって』 ・・・・・・ほぅ。 つまりお前も一枚以上は噛んでると。 『家持ちで親いない(向こうは両親が他界してマンション持ち)し、収入も貯金もあるみたいで・・・何かあれば俺がさくっと殺せば困らないだろ?』 家あって金あって親がいないなら、確かに結婚対象として良物件ではある。 間違っていない、その認識は、確かに間違っていない。 が、 「( そ れ で も 地 雷 人 間 と な ん て 論 外 が 過 ぎ る ん だ よ )」 怒り心頭、怒髪天を突くレベル。 しだらはいつの間にか正座をしてブレイクよろしくな全身硬直で微動だにせず、 オニは土下座をして『ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい』と壊れたスピーカーのように繰り返す。
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