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【仲良き事は】幽霊と暮らしてる【美しき哉】別館
311:739◆Al9ki804zA 06/17(木) 22:29 UGQ/9EQF0
『警戒された話』
しだらがツいてから最初の晩秋だったと思う。
ある休日に、母と姉夫婦一家とでショッピング街で買い物をしていたときのこと。
色々な店を見て回り、ちょっと休憩しようという流れになって、ショッピング街にある百貨店の上層階の軽食店に入ったんだ。
座って足を休めて、注文した飲み物を飲んで。
そうしたら不意に深い眠気を覚えて、母と姉達に「眠いから軽く寝るわ」と言って、目を閉じた。
恐らく、歩き回り続けて疲れたのだろうと、そう、思って。
そして浅い入眠に入ったのだが、カラダは眠っていてアタマは起きている状態になり、意識の限りに広がるのは闇の空間。
怪訝に思いながらも「(いざとなったら無理矢理覚醒すればいっか)」と闇の空間の中を進んでいった。
そうしていくと、不意に、ジブンから遠ざかった気配を知って振り向けば、そこにはしだらが中空で拳をナニかに叩きつけながらコチラを聞こえない声で呼び続けて、取り残されていた。
ナニかは良くわからないが、どうやら透明な壁に阻まれていたらしい。ヤツだけが。
ますます怪訝さを覚えるも、先のほうにジブンたち以外の気配があることに気付いて、ヤツを置いてそのまま進んだ。ヤツのことなら、どうせあとで追いつくだろうと。コチラがどれほど離れようと引き剥がそうとしても他の連中の干渉にされようとも、悪霊顔負けの執念で追い続けるコイツなら。
そうして進んでほどなくすると、周囲の闇の空間よりも更に濃い闇、漆黒の色をした二つ尾の山犬が、目の前にいた。
その山犬は漆黒の毛並みより更に深い黒い眼をコチラに向け、警戒、不審、苛立ち、の念を露骨に醸し出して、ただ伝えてくる。
――何しに来た
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