下
【仲良き事は】幽霊と暮らしてる【美しき哉】別館
313:739◆Al9ki804zA 06/17(木) 22:35 UGQ/9EQF0
すると、黒い山犬は今一つ腑に落ちなさそうな気配を呈するものの、流石に無加工情報をジブン都合で見ておきながら食い下がるという野暮な真似はしなかった。
そうして周囲から闇が引いて山犬の姿も気配もなくなり、ふとした瞬間には寝入る前の軽食店のテーブルについたままで、母と姉一家は雑談したままだった。
そこに同じく加わり、何事もなく退店して解散し、私は友人たちとの飲みの約束のため母と家に戻らず飲み場所の最寄り駅へと向かった。
そして時間つぶしのために、最寄り駅のカフェでひとり寛いでいて、
思い出すのは先ほどの不可解な出来事。
「(あそこにショッピング以外の目的なんぞないのに、なして警戒されなあかんのよ)」
と、くさくさした気分ながらも、思い返したのはしだらとの引き離し。
なんであんなことをする必要があったのか。
「(あの山犬の目的は飽くまで、アタシ、なのはわかったが、こちらとらパンピーでしかないぞ。そのパンピーがヤツと共にいたら、なんか厄介とか面倒なことでもあったのか?)」
と、甘いカフェオレで糖分摂取して、思い至ったのは。
「・・・ひょっとして、アタシ、本当に警戒されていた?」
しだらは「ニンゲンが好き過ぎて過干渉のやらかし常習者」のために「神不在の社に『社と云う装置を稼動させるための装置』として投獄されていた」という前歴持ちである。
そしてソレを、結果的にとはいえ、投獄状態を解除してしまったのは、私。
更に、その投獄の神社は、いた百貨店から徒歩30分あれば着く、百年ほど前ならばゆうに徒歩圏内の場所。
あの山犬がその百貨店住まいならば知らない線のほうが薄いだろうし、その百貨店を守っているならば、
想ったニンゲンのためならばナニをも厭わない旧くからの神と、そんな神を開放して連れ歩くニンゲン。
その『ニンゲン』が本気で望めば、或いは、
ジブンがパンピー過ぎてソレまで考えたこともなかったが、周囲がどんなメでコッチを見ているのかを改めて考えたら、
一瞬だけ、一髪よりも短い時間だったが、確かにゾッとした。
314:739◆Al9ki804zA 06/17(木) 22:36 UGQ/9EQF0
が、
「ま、パンピーはパンピーでしかないから、期待されたとこでナニもねぇわな」
と、思い直し、改めて甘いカフェオレを啜って始まるまでの時間を潰した。
そしてソレからかなり経ってもう一度、今度は姉夫婦と共にその百貨店へ赴いた際、目的もなくなんとはなしに最上階まで登ったのだが、そこでやっと知った。
その百貨店には屋上社寺があり、その社寺には『豊川稲荷大明神』に関連した云われがあるとのこと。
ということは、アレはとても真面目な神遣さん(昔に周囲が火の海になっても祀っていたその百貨店は無事だったという)であり、だとしたら確かにしだらのようなヤツは、そもそもが「気に食わない」相手でしかないよなーと。
とはいえ、アレは少なくとも『狐』ではない、狐の尻尾はああじゃないし、顔つきも違う。ヤマイヌのほうが近い。
そもそも、豊川稲荷の元はダーキニーであり、当柱のアレは『ジャッカル』であり、そのジャッカルを狐扱いするのはどっちにも失礼だよなーと。
狐が全部稲荷(伏見稲荷のそもそもならば秦氏による稲荷山を用いた祖霊信仰で『狐』は後世の後付けだし)だと思っていなければ、稲荷が全部狐だと思ってもないし、思えるわけもない。
『狐スキン使ってりゃ、ニンゲン勝手にびびってくれて楽勝www』
って、向こうが舐めているのを知っているなら尚更に。
315:739◆Al9ki804zA 06/17(木) 22:39 UGQ/9EQF0
余談『警戒されはしたが、の話』
今から数年ほど前の年末のこと。ゲーム仲間の頼みでゲームイベントのボランティアスタッフをやって欲しいと頼まれ、引き受け、向かった当日のこと。
目的地の最寄り駅とは呼べはしないが、徒歩で充分向かえるくらいの駅で、降りた。
そこは、かつて長らく路線の『始終』だった駅だが、他線との乗り入れでそうではなくなってしまった駅だった。
そして、幼いころからその路線を使っていた身として、その『最後の駅』に対して憧憬の念を抱いており、しかし、どこか勿体なさもあって、そこまで乗ることは全くなく、イベントボランティアを機会として初めて駅に降りることができた。なお、しだらの神社はその駅の一つ前で、コチラはしょっちゅう乗降してはいるのだが、コレは単に路線乗り換えでなんだ。
駅の名前は、その一帯で有名な社寺のソレ。ようやく、この期に参拝することができた。
天気こそあいにくの雨だが、小降り程度のためそれほどのことじゃない。
さぁ、いったんの目的地へ向かうぞ、と意気込んで歩いていたのだが、
かなり近いところまで来て、ふとカオに違和感を覚えて、ふと立ち止まる。
何やら、薄すぎて視認できないベールのようなものが垂れ下がっていて、ソレが顔に掛かったような感触だった。
その妙すぎる感覚に小首を傾げる、と、
――ふん、『(しだらが投獄されていた社寺名)』とこの小娘か
316:739◆Al9ki804zA 06/17(木) 22:40 UGQ/9EQF0
妙齢の女性の声が聞こえたかと思うと顔を覆っていたような違和感は消え去った、とはいえ少し呆然。
「(え、アレが所謂『結界』なの? つか、そんなの実在してたの?)」
と、フィクションでしかないと思っていたモノに軽く驚きながら、
「(アタシ、もう来年30なんだけど!?『小娘』はキツいでしょ『小娘』わ!)」
と、子供扱いされたことに軽く憤慨しつつも連中の存在時間を考えたら、間違ってはいないと溜飲を下げ、
「(つか、ヤツんとこのってナニ!!? アタシあそこの氏子でも崇敬者でもないんですけど???)」
と、勝手に括られたことに立腹しつつも、向こうからしたらそんなどうでもいいことにいつまでも足を止めるワケにもいかず。
参拝するぞと中に入り、かなり近代化されていることに、幼い頃の憧憬にヒビが入る音を聞きながらも、センサー式ハイテク手水で手を洗っていると、不意に周囲が明るくなって、なんとはなしに顔を上げて、
びしり、と、カラダが音を立てて固まった。
小雨ながらもしっかりとした冬の曇天、だった筈だのに、
社寺周辺の上空だけが青く広がり、白い太陽光が内部を明るく満たし、雲が消える前に落ちた小さな雨粒がきらきらと差し込んだ太陽光を受けて輝き出す。
局所が過ぎる天気雨
その『出迎え』方に、私は、ただ、ただ、
ジブンの眼が死んでいくのを、感じ取ることしかできなかったんだ。
――――
317:739◆Al9ki804zA 07/01(木) 21:55 S4Jn+cGo0
『家付きカー付きババ抜き』の発想で選ぶのは確かにアリだけれども、な話
月初の朝礼で一つ年下の先輩女性社員の正式な結婚報告が発表されて、ふと思い出したこと。
飽くまで『今は昔』でしかないのだが、私は異性から結構好意を寄せられるほうだった。
しかし、「愛と好意は各暴力の免罪符」という考えがあるのと、
そもそも他者への興味関心が薄いため、寄せられた好意に浮かれて付き合っても恋愛感情自体に三日で飽き、一週間で相手へのケアがめんどくさくなるもがんばるもめんどくささが勝り、一ヶ月で自然消滅か先方病み化という結果に終わるので、流石に「こらー、あかんわ」となって、先方からソウイウ気配を察知したら距離を取って先に自然消滅を計っていた。
飽くまで『今は昔』だが。
そんな『昔』のこと。今の体質を負ってから数年経過していたときのこと。
当時よくつるんでいたゲーム仲間で「行ける人間でネズミー行こうぜ!」とネズミー大好き者が発案し、割と日数は早かったが、そこそこの人数が集まった。
そのメンツの殆どは互いに軽口叩き合える同士なのだが、一人だけ『私』には確実な地雷人間がいた。しかも、肌と直感で私に好意を抱いていることがわかったので、尚更に警戒対象だった。
とはいえ、
「(こんなそこそこの人数いるんだから変なことは起こらんし、起きんでしょ。変に動こうものなら周囲のからの止めが入ってソッチが『注意人物』確定扱いされてジブンの立場悪くなるんだから、流石にそこまでバカでもないだろ。まぁ、そんなバカだったら周囲にソウだと周知されるから、アタシは構わんけどな)」
と考えてフツーにアトラクションや歓談を楽しむことにした。
しだら?
ヤツはテーマパークの話が持ち上がった瞬間からバイブス()上げまくって入園と同時にどっか行ったよ。
それはさておき。
318:739◆Al9ki804zA 07/01(木) 21:57 S4Jn+cGo0
ネズミー大好き者のガイドの下、ファストパスを取っていって効率的に巡っていった。
ビッグサンダー、スプラッシュ、ホーンテッド、他。
そんなこんなで楽しんでいたのだが、なんか様子が妙だった。
メンツの何人かが私と距離を置いており、その空いた距離に件の地雷人間が入ってきてる。
思い違いか?と考えてそれとなく距離を調節していみると、メンツの何人かがソレに合わせて同じように調節してきて、開いた距離にやっぱり地雷人間が入ってきた。
ピンときた。
コレはヤツに相談かナニかを持ちかけられて立てられた『企画』なのだと。発案から程なく(半月もなかった)実行「できた」のは、明確な目的があったから。
「(あんたらコイツが地雷人間わかってないからそんなことできるんだぞ)」と内心でちょっとカチンとキたものの、わからないものはわからないのだからしょうがないし、何より相談を持ちかけたら動きたくなるのが人情というもの。つか、ネズミーは楽しい。それが一番大事。
先ほど置いてみた距離とメンツとの動き方で、全員が全員グルというわけでもなく、純粋に楽しみにきた人間もいることがわかり、その人間を主な歓談相手とした。これなら、地雷人間に“お前に興味はねーんだよ”と見せることができるし、企画者たちにも“わたし、コイツ、ヤなんで”と知らせることができる。
そしてソレが功を奏したのか、徐々に地雷人間が焦りを見せ、全く関係のない話題を振って逆に周囲を白けさせたり(発案者がソイツに少し離れた場所で「その話題は今に相応しくない」と注意したのが見えたし聞こえた)、夕方過ぎた頃に「なんでぼくを避けるんですか!!」と、周囲がいるにも関わらず面と向かっての大声。これにはメンツが驚き固まったが、一方の私といえば突然の大きな音に驚きこそすれ「(コイツ、バカだったか)」と相手に対する認識を下方修正して、言った。
「大声出さないでくれますか? 他のお客さんもいるんですよ?」
319:739◆Al9ki804zA 07/01(木) 21:58 S4Jn+cGo0
そのややあと、夕食&パレード観覧のため、とあるレストランのテラス席にて。
男性陣が食事の注文と引き取りの間、女性陣が場所取りをしていたときに、
発案者が、私に頭を下げた。
「キユさん、ごめんッ」
私が気付いていたことに気付いた故の謝罪だった。
「いいーえー」
私は笑って手を振った。
私としては、ネズミー自体は最高だし、メンツとバカやれて楽しいし、自衛はできてるし、ヤツがボロったために今後はないだろうし、メンツに「あいつなんかちょっと?」と思ってもらえただけ充分(そして実際こっから結構イロイロやらかし始めて界隈から警戒すらされる)だもの。
料理を食べながらのテラス席から見たイルミネーションパレードは、素晴らしかった。
やや遠目だが、変に見切れや途切れもなく、しっかりと眺められた。
320:739◆Al9ki804zA 07/01(木) 21:58 S4Jn+cGo0
そうしてお開きになり、シャトルバスで最寄り路線駅まで乗り、家の最寄り駅まで電車で揺られている中。
なんだか珍しく申し訳なさそうな気配を滲ませているしだらに、どこか狼狽しているオニ(鬼門丑寅からの連想ゲームで生まれた牛角虎パンというキャラ化された『鬼』ではなく、原義の『隠』に近い元・死霊への便宜上呼称)。
一体なんだと思ったら、しだら。
『いや・・・ただちょっと、子ども見たいなぁって』
・・・・・・ほぅ。
つまりお前も一枚以上は噛んでると。
『家持ちで親いない(向こうは両親が他界してマンション持ち)し、収入も貯金もあるみたいで・・・何かあれば俺がさくっと殺せば困らないだろ?』
家あって金あって親がいないなら、確かに結婚対象として良物件ではある。
間違っていない、その認識は、確かに間違っていない。
が、
「( そ れ で も 地 雷 人 間 と な ん て 論 外 が 過 ぎ る ん だ よ )」
怒り心頭、怒髪天を突くレベル。
しだらはいつの間にか正座をしてブレイクよろしくな全身硬直で微動だにせず、
オニは土下座をして『ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい』と壊れたスピーカーのように繰り返す。
321:739◆Al9ki804zA 07/01(木) 21:59 S4Jn+cGo0
しかし、一度閾値を超えた怒りは、そう簡単に収まるワケもなく。
「(しかも『いざとなったら殺すからいい』だぁ? 倫理以前に手段が安直過ぎんだよ!!ァあ!?)」
背からの怒りが腹に溜まり口から放射熱線を吐き出せたような気さえした。
「(大方、墓守が欲しいク祖霊どもに吹き込まれて上手い具合に乗せられたってのもあるんだろ。だから祖霊信仰が廃れていくんだろ、クソ老害共!! 夫が死んでくれたら妻は元の家に子と財を持って戻るからなァ!!テメーら自身じゃ何もできないのにテメー都合の利益のために子孫を引っかきマワすくらいなら何もせず大人しく死んでろ!ジブンの手を汚すことすら出来ない卑怯者どもめ!!)」
恐らくリアルで肩で息をしていたと思ふ。23時を回って他に乗客がいなくて良かった。
ある程度にキレ散らかしてくると多少は冷静になって、アタマに浮かんでくるのは今後のこと。
アレが多少なりとも懐疑的な人間だということは、少なくともあのメンツには知られたと思う。
だが、ソレでアレの行動が終わるとも思えない。あのテは自身の独善性に無自覚が過ぎて悪気が無いからいっそ邪悪。不味いことをしているとわからないまま続けてクる可能性が濃厚だった。
ならば、
「(お前が欲しいのはソウイウ相手だから、別にソレがアタシじゃなくてもいいんだろ!!?)」
地雷人間の『予定』に干渉して、
同じ仲間内の中でも地雷人間(女)へと気が傾くようにと叩き書いた。
「(アタシはお優しいからねぇ、書き換えてやる以上キチンと『幸せ』にさせてやるよ!ソレで『幸せ』になれたらアタシへの干渉もなくなるもんなァ!!)」
先ほどの心頭した怒りでエネルギーは有り余っていたので、逆にそのエネルギーを消費させきりたくて、実行。
「(ふぅ、スッキリした)」
晴れ晴れとした気分で電車を降りて、真っ直ぐ家に帰った。
地雷人間のことは、一旦もうどうでもよくなっていた。
322:739◆Al9ki804zA 07/01(木) 22:02 S4Jn+cGo0
そして前述したようにソイツはイロイロやらかして仲間内の多くから薄皮一枚レベルの付き合いをされるのだが、ネズミーから一年ほど経過したあとで、その地雷人間(男)は地雷人間(女)は結婚して、知人伝いでラブラブ()が続いているらしい。
なお、私がやったのは、自らの気を休めるためのおまじないでしかなく、そもそもどんなにコーラの看板を打ち出そうがコーラに興味が無ければ手にとられないのと同じように、その相手に興味がなかったらナニも起こらないまま終わるのであって。つまり結局は『似た者同士』で引かれ合って『割れ鍋に綴じ蓋』だったと。
だったら最初からソッチに行って、アタシにソウイウ気を持つなよな、と、思ってる。
――――
上前次1-新書写板覧主AA省