学校の怪談2

 

54 名前:1/2[] 投稿日:2008/07/02(水) 00:31:50 ID:vYm7hLMY0
六個目
厨時代の体験は小さいものがポロポロ と言うのが多いので、まとまりのあるのをヒトツ。
ただ話自体はあまり怖くないと思う。

学校の怪談その2
 14歳の夏の「ランナー」の話。
 前述の通り、厨時代吹奏楽部に在籍していた。
 当時吹奏楽部では、音楽室のある3階の一般教室で、それぞれのパート(楽器)に分かれ、
 パート練習なるものを行っていた。
 そんな中、教室棟の西端、1年4組前の廊下でそれはしばしば目撃されていた。
 
 それは廊下の東端から走ってきて、西端の非常階段入口に消え
 しばらく待っているとまた東端から現れ、また西端へと消えていく。
 ただその繰り返しの存在。
 自分が「ランナー」と名づけて、仲間内ではそれで通っていた。

 当時仲の良かったTが、その西端、1年4組の教室で練習するパートのリーダーだった。
 Tは自分と同じくらい「わかる」ヤツで、その「ランナー」のこともよく見ていた。
 しかし、見ると言ってもTも自分も、その姿を細部まで視認したことは無く、「今走っていった」というのが気配でわかる、と言った感じだった。
 
 ある日。
 音楽室の向かいの視聴覚室で練習していた自分はTに用事があって、1年4組の教室へ行った。
 廊下で二人で話していた時、Tが「あ…」と声を上げた。
  何だ?
 振り返ると、真横。Tと自分の間を、「ランナー」が走り抜けていった。
 自分の身体と「ランナー」との距離は、10cmもなかったと思う。
 
 初めて、それだけ間近でそういったものを見た。
 1995年の、「キャスパー」という映画を観た事があるだろうか。
 可愛らしいゴーストが、主人公の女の子の前で「姿を消すことも出来るよ」と姿を消して見せることがあるのだが、そんな感じ。
 空中に透明なものがあって、それを通して見る向こうの背景が歪んでいるような。
 陽炎をヒトの形に集めたような感じだった。

55 名前:2/2[] 投稿日:2008/07/02(水) 00:32:22 ID:vYm7hLMY0
 怖いというより呆気に取られた。
 悪意だの敵意だの、恨めしげなものは一切感じなかった。
 本当に、ただ走っているだけのもの。
 そう言った意味では、「ランナー」は妖怪の類だったのかもしれない。

 Tと自分は「あれはああいうもの」と、さして問題視していなかったのだが
 当時の部活は一種異様な状況で、Tや自分といったそうした感覚の強い人間にあてられたのか、
 仲間内では 元々はそうしたものに対して全く感覚が無かった者までもが「見える」状態になっていて、
 その連中が騒ぎ出した。
 
 考えた結果、当時怖いものを知らなかった自分が
 「お祓い」めいたことをすることになった。
 Tには止められたが、周りに推される形で、他の生徒のいない日曜の練習日に執り行うことになった。
 今にして思うと、とんでもない傲慢なのだが
 中途半端な感覚の持ち主は足手まといだと思ったので、Tと二人で1年4組前の廊下に行った。

 家からくすねてきた線香を焚き、般若心経を唱えた。
 
 奇跡的に、それ以来「ランナー」は出なくなった。
 その頃はとんでもなくガキで、根拠の無い自信に満ちていたので、よかったよかったと思って終わりだったが
 今考えるとそれは本当に奇跡的なことだったと思う。
 変に刺激したことで、自分が取り憑かれてもおかしくなかったのに。
 そう思うと本当に怖い。
 守ってくれたひとたちに、心の底から感謝する。


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