長い男

 

75 名前:[] 投稿日:2008/07/05(土) 00:12:14 ID:TOyuPCEY0
20歳ぐらいのときのことだと思う。
その頃、ちょっと体を壊してて、よく寝込んだ。
夏のある昼間、畳敷きの自室のど真ん中で動けなくなり、そのまま横になった。
家には誰もいなかった。部屋の入り口は足元にある襖。倒れたのが突然だったんで、当然、閉めにいく間もなく全開のまま。

階下で食器を片す音がし始める。それ自体は珍しくもなく、私以外でも多くの家族友人が聞いていた。
その音は、徐々に近づいてきて、階段を登り始める。

いつもとパターンが違うな、と思い始めた。
足音は階段を登りきり、私の部屋の入り口までやってきていた。
目をつぶっているので想像なのだが、身長が異様に高かった。180センチの入り口の高さを、腰をかがめて入ってくる。

その存在は、私の左半身をゆっくりと回り始めた。ときどき湿り気を帯びた息遣いが聞こえる。
頭の上で立ち止まったとき、目を開けようかと迷った。でも面倒でやめた。
私の寝起きの悪さは半端じゃない。
彼(その時点で男だとはっきり認識)は、さらに右半身に回り込み。
腰の辺りで、唐突に座り込んだ。

76 名前:[] 投稿日:2008/07/05(土) 00:12:46 ID:TOyuPCEY0
私は消防のころから霊現象に見舞われていたので、ある程度は自衛できるようになっていた。
その方法は、まず手を硬く握る。そして、体の中でエネルギーが一番集まりやすい場所(性器でもいいよ)に意識を集中する。
もし怖気づくような経験をしたら試してみてほしい。本当に恐怖心がなくなるから。
私の場合は胃の奥にその箇所がある。集中すると腹部全体が熱くなるのね。そのタイミングで腹筋に力を込めると、霊を「意識で殴って霧

散」させることできるわけ。

その手順を踏んで傍らの得体の知れない存在を退散させようとしたとき、彼が長い上半身を伸ばして、私の体の上をゆらゆらと彷徨いはじ

めた。
息遣いは、相変わらず獣じみて気持ちが悪い(汗)。
準備ができて、彼を退治しようとした瞬間、彼は頭突きを私の胃にかましてきた。

空気の固まりのような質量だった。
たいして痛くはなかったけど、ビックリして悲鳴をあげて、目を開けた。
一瞬だけ、ニヤついた20代後半の男の顔が目の前に現れて。
…消えた。

自分の能力が霊ごときに負けたショックと(笑)、なんだかとっても疲れた肉体のせいもあって、そのまま寝た。
よく眠れた。

77 名前:[] 投稿日:2008/07/05(土) 00:13:10 ID:TOyuPCEY0
その夜。さすがに気味が悪かったので、部屋の入り口の襖はちゃんと閉めた。
ついでに、例日の暑さに開けっ放しにしておいた窓も、鍵とセキュリティボタン(鍵についてる切り替えし式のやつ)をしっかり閉めた。

翌日、ベランダに洗濯物を干しに行った母が、惰眠を貪っていた私を起こした。
「ちょっと見て!」
見ると、ベランダには歩き回った足跡が無数についていた。

隣家は2メートルほどの塀を囲われている。ふだんから、その塀によじ登ったら、我が家の2Fなど簡単に占領されるな、と思っていた。どうやら実行した輩がいたらしい。

母が甲高い声で「夜中に誰か入って来なかった?!」と聞くので、
「さあ?窓閉めてたから気づかなかったよ」と答えた。
…答えて気づいた。

あの霊の目的がなんであれ、我が家が災難を免れたのは事実だ。
ベランダの足跡は、私の部屋の窓の前を三往復していた。窓が空いていたら…入られたね、絶対。

以来、「彼」は、3度、私の部屋に入ってきた。
私は、感謝の意味もあり、寝たふりをしていた。
抱き疲れても、パジャマのズボンを下ろされても。

今はもう出ない。

78 名前:本当にあった怖い名無し[] 投稿日:2008/07/05(土) 00:18:40 ID:TOyuPCEY0
誤字だらけなのに、いまさら気づいたorz

79 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2008/07/05(土) 02:14:53 ID:QS+dyaws0
「彼」は良い人なのか、ただのエロい人なのか……。
けど、>>78が無事で良かった。


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