若返りの泉
むかしむかし、日本の山々の間のどこかに、貧しいある日老いた男は、とある種類の木を捜しに普段よりも森の奥へ進んで行くと、いつの間にか自分が今までに見たことの無い小さな泉の端にいるのに気が付いた。水は不思議なほど冷たく澄みきっており、またその日は暑い中を苦労して歩いたので喉が渇いていた。そうして大きな麦藁帽子を脱ぎ、膝をついて長いこと飲み続けた。
その水は極めて脅威的な方法で彼を回復させたようである。それから泉に自分の顔を見付けて後ずさった。間違い無く自分の顔ではあるが、家の銅鏡で見慣れたのとは全く違っていた。とても若い男の顔であった。自分の目が信じられなかった。しばらく前に綺麗にはげ上がった頭に両手をのせて、いつも持ち歩いている小さな青い手拭いで拭いてみた。ところが今ではふさふさとした黒い髪でおおわれていた。また、顔は
最初に高く跳び上がって大きな喜びの声を上げ──それから今までの人生でかつて走ったことの無い早い速度で家へ走った 。家に入ると妻は
それに対して彼女は言った──「あんたは、そんな男前で、そんなに若くなりなさっては、こんなお
泉を見付け、膝をついて飲みはじめた。ああ何て冷たくて気持ちがいいんだろう、この水は。飲んで飲んで飲んで、息を継ぐ為だけに休んで、また繰り返した。
夫はもどかしげに待った──
泉に着いても彼女は見付からなかった。ちょうど帰ろうとした所で、泉のそばの高い草の間から、小さな泣き声が聞こえた。そこを調べてみると、妻の着物と赤ん坊が見付かった──とても小さな赤ん坊で、おそらく6ヶ月くらいの歳だろう。
お婆さんは不思議な水をあまりにもたくさん飲み過ぎたため、若い頃を通り過ぎて言葉を話せない幼児の時代に遠く後退するよう自身を飲み込んだ。
彼はその赤ん坊を両手で抱き上げた。その子は悲しく不思議そうに彼を見た。その子を家まで運んだ──言いようのない哀しい思いを──ぶつぶつ