かけひき
屋敷の庭で処刑しろと命じられていた。砂を広く敷き詰め飛び石を一列に並べた、今でもよくある日本式の庭に男が引き立てられ不意に罪人が主人へ向かって叫んだ──
「そこのおえらいさんよ、失敗をしたのは運が悪かったんだ、わざとやったんじゃない。失敗をしたのは大間抜けだっただけなんだ。生まれつき間抜けなのは
もしも誰かが殺されれば、強い恨みを抱いている間、その者の怨念は殺害者に対して復讐できる。これを侍は知っていた。穏やかに言葉を返した──まるで愛情を込めるかのように──
「我々の恐怖が大きければ大きいほど嬉しいのだろう──死んだ後で。しかし言う事を信じるのは難しいのだ。だから恨みの大きさを示す何かしるしを見せてはくれまいか──頭が切り離された後で。」
「必ず見せてやろう」男は答えた。
「大変よろしい」侍はそう言うと長い刀を引き寄せた──「これから頭を切り落とす。前にある飛び石に向かってまっすぐ。頭が切り離されてから、その飛び石に噛み付いてくれ。もしも怒りの念の助けを借りてそれを成すなら、誰かが恐れおののくだろう……石に噛み付いてみるかね。」
「噛み付いてやる」激しい怒りの内に叫んだ──「噛み付いてやる──噛み付いてやる──」
閃光が走った、ヒュン、ザク、ドサ、弾んだ体は米俵の上へ
誰もが言葉を失い、家臣達は
それから数ヶ月に渡って、家臣と家族は幽霊がやって来はしないかと絶えず怯えて暮らした。復讐の約束を果たしに来るのを疑う者は誰も居らず、相変わらず怯え続けていたせいで、有りもしない物を見たり聞いたりする者が後を絶たなかった。竹薮に吹く風の音に恐怖の虜となり──庭に映る影が動くだけで恐れる始末であった。しまいには相談の後で怨霊を鎮めるため
「全く必要ない。」家臣の代表が皆の望みを伝えた時、侍はこう答えた……「復讐心を抱いて死に行く者の願いが怖れの元になるだろうとは理解している。だが今回の場合は怖れることでは無い。」
その家臣は懇願するように主人を見つめたが、ただならぬ自信の訳を
「ああ、ごく簡単な理由だ。」言葉にされない疑いを察知して、侍はこう宣言した。「あいつのまさに最後の意図だけが危険であったのだから、あの時、証拠を見せるよう挑発して復讐を願う心を
──そして、確かにその死者は何も問題を起こさなかった。全く何も起こらなかった。