死骸に乗る者
※「体は氷のように冷たく心臓は長らく鼓動を終えていたが、他の死を示す兆候はまだ無かった。女の埋葬の話さえ誰もしなかった。離縁された悲しみと怒りで死んだ。埋葬するのは無駄であろう──死に行く者の復讐に対する最後の望みは滅びず、どんな墓石でも粉々に吹き飛ばし、最も重い墓場の石でも割れるからだ。横たわる家の近くに住む者達は、家庭から逃げ出した。離縁した男の帰りを待っているだけなのは皆が知っていた。
彼女が死を迎えた時、男は旅の途上にあった。戻ってから、何が起こったのかを聞いて恐怖の虜となった。「暗くなる前に助けが見つからねば」自分自身を思った「八つ裂きにされるだろう。」まだ
ただちに
日が落ちると陰陽師は死体が横たわる家へ連れて行った。陰陽師は引き戸を押し開けると、依頼人に入るよう言った。
死んだ女はうつ伏せで横たわっていた。「まず彼女の上にまたがりなさい」陰陽師は言う「そして馬に乗るようにしっかり背中へ座りなさい……来て──やるのです。」陰陽師が支えなくてはならないほど男は震えた──恐ろしさに震えながらも従った。「では、両手で髪を持ちなさい、」陰陽師が命令した──「半分を右手に、もう半分は左手で……そう……それを手綱のように握るのです。手に巻きつけて──両手に──しっかりと。そのやり方です……聞いて下さい。あなたは、そのまま朝まで居なくてはなりません。夜には恐ろしいことが起きるでしょう──きっとたくさん。けれど、何があっても決して髪を離してはなりません。もし離せば──ほんの一瞬であっても──肉の
陰陽師は死体の耳に奇妙な言葉を
何時間も何時間も暗い恐れの中、男は死骸の上に座っていた──そして
しまいに彼女は引き返し、家の中へ走って戻り、最初と同じように、きっちりと床へ横になった。雄鶏が鳴き始めるまで男の下で喘ぎもがき続けた。その後は横になったまま動かなくなった。
しかし男は歯をガチガチ言わせて、日が昇り陰陽師が来るまでの間、彼女の上に座り続けた。「そうやって髪を離さなかったのですね。」──よく確めてから陰陽師は大いに喜んだ。「それで良いのです……もう立ち上がれますよ。」再び死骸の耳に囁くと男に言った──「恐ろしい夜をやり過ごさなくてはなりませんでしたが、他の方法では助けられなかったのです。これから先、復讐の心配をする必用は有りません。」
* * *
この話の結末が倫理的に十分とは思わない。死骸に乗る者が発狂したとか、男の髪が真っ白に変わったとは記録されていない。ただ「男は涙を浮かべて陰陽師を拝んだ」と語られているに過ぎない。詳細を説明する追加の書き込みも同様に期待外れだ。「こう知らされた」日本の筆者は言う、「〔死骸に乗った〕男の孫はまだ存命であり、陰陽師の孫もまさしくこの時代に
この村の名前は